― 最新メタアナリシスからわかる科学的事実 ―
2023年に発表されたメタアナリシス「The Effect of Caffeine on Subsequent Sleep」では、カフェイン摂取が睡眠に与える影響を客観的に評価し、量やタイミングに関する実践的な指針が提示されています。
本記事では、その研究内容をもとに、カフェインと睡眠の関係をわかりやすく解説します。
カフェインはなぜ眠れなくなるのか?
カフェインは中枢神経を刺激し、覚醒を促す作用で知られています。
その主なメカニズムは「アデノシン受容体の遮断」です。
本来、アデノシンは覚醒時間が長くなるほど脳内に蓄積し、眠気を引き起こします。
しかしカフェインはこの作用を抑えるため、疲労感が軽減し、一時的に集中力やパフォーマンスが向上します。
一方で、この覚醒作用が持続することで、睡眠の質に影響を与える可能性があります。
研究方法:24研究を統合したメタアナリシス
本研究では以下のデータベースから成人対象の24研究を抽出し解析しています。
- CINAHL
- MEDLINE
- SPORTDiscus
- Web of Science
評価項目は次の通りです。
- 総睡眠時間
- 入眠までの時間(睡眠潜時)
- 睡眠効率
- 睡眠段階(N1・N2・N3・REM)
さらに、摂取量や摂取タイミングの違いも考慮され、実践的なガイドラインの作成が目的とされました。
研究結果①:総睡眠時間は平均45分減少
カフェイン摂取により、総睡眠時間は平均45分短縮することが示されました。
特に、
- 就寝直前の摂取
- 高用量の摂取
ほど影響が大きく、入眠遅延や夜間覚醒の増加が関係していると考えられます。
慢性的な睡眠不足は、集中力や日中パフォーマンスの低下につながる可能性があります。
研究結果②:睡眠効率は約7%低下
睡眠効率(ベッド時間に対する実睡眠時間)は約7%低下しました。
覚醒作用が持続することで中途覚醒が増え、深い眠りが妨げられることが要因と考えられます。
一般的に睡眠効率85%以上が良好とされるため、この低下は無視できない変化です。
研究結果③:入眠までの時間が延びる
睡眠潜時は平均9分延長しました。
特に「就寝3時間以内」のカフェイン摂取は入眠を妨げやすく、神経系の覚醒状態が続くことでリラックスが難しくなる可能性があります。
研究結果④:深い睡眠(N3)が減少
睡眠構造にも変化が見られました。
- 浅い睡眠(N1):増加
- 深い睡眠(N3):減少
深い睡眠は身体回復や脳の修復に重要な段階です。
この減少は、翌日の疲労感や集中力低下につながる可能性があります。
研究結果⑤:主観的な睡眠の質も低下
被験者は、
- 寝付きが悪い
- 夜中に目が覚める
- 睡眠の質が悪い
と感じる傾向があり、主観的な評価でも睡眠への影響が示されました。
就寝前カフェインの具体的ガイドライン
研究から導かれた目安は以下の通りです。

- ブラックティー(約47mg):大きな影響なし
- コーヒー(約107mg):就寝8.8時間前まで
- プレワークアウト(約217mg):就寝13.2時間前まで
例えば22時就寝なら:
- コーヒー → 13:12まで
- 高カフェインサプリ → 8:50まで
カフェインの半減期(3~6時間)より長い時間が必要である点は重要です。
習慣的摂取と耐性の可能性
長期摂取ではアデノシン受容体の増加による「耐性」が形成される可能性があります。
ただし人間での影響はまだ十分に解明されていません。
個人差が大きいため、一般的なガイドラインはあくまで目安と考える必要があります。
睡眠を守るための実践ポイント
① 就寝8時間前までにカフェインを終える
夜間摂取を避けるだけでも睡眠は改善する可能性があります。
② 自分の反応をチェックする
個人差が大きいため、翌日の体調や睡眠感覚を確認しましょう。
③ 代謝速度に合わせて調整する
普段カフェインを摂らない人ほど影響を受けやすい傾向があります。
まとめ:カフェインは使い方が重要
カフェインは集中力向上に役立つ一方で、睡眠の質を低下させる可能性があります。
今回のメタアナリシスは、
👉 摂取タイミングと量の管理が睡眠を守る鍵
であることを示しています。
日常生活の中でカフェイン摂取を見直すことで、より質の高い睡眠とパフォーマンスの向上が期待できます。
📚 参考文献
Gardiner C, Weakley J, Burke LM, Roach GD, Sargent C, Maniar N, Townshend A, Halson SL.
The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis.
Sleep Medicine Reviews. 2023;69:101764.
doi:10.1016/j.smrv.2023.101764


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