ストレッチは意味がない?最新科学が示すエビデンス

健康 Health

はじめに:ストレッチの「よくある誤解」

運動後のストレッチは、部活動やジム、ランニング後など、多くの人が当たり前のように行っている習慣です。「ストレッチをすると疲労が抜ける」「回復が早くなる」といった話を聞いたことがある方も多いでしょう。

しかし近年の研究では、ストレッチ=回復を早めるという考え方は、必ずしも科学的に支持されていないことが分かってきました。

ここで大切なのは、「ストレッチが無意味」という極端な結論ではありません。
ストレッチには役割がありますが、その目的を正しく理解することが重要なのです。運動後ストレッチの科学的な結論

近年のシステマティックレビューやメタ解析では、運動後のストレッチについて次のような結果が報告されています。

回復促進としての明確な効果は確認されていない

  • 筋力回復を早めるという十分な証拠はない
  • 翌日以降のパフォーマンス改善も有意差なし
  • 遅発性筋肉痛(DOMS)の軽減効果も限定的

つまり、「気持ちが楽になる」という主観的な感覚と、「筋肉の修復が早まる」といった生理学的な回復は別のものだと考えられています。

運動後にストレッチをするとスッキリする感覚はありますが、それが必ずしも身体の回復を加速しているわけではないのです。

それでもストレッチが役立つ理由

では、ストレッチは本当に必要ないのでしょうか?
答えはNOです。

研究では、ストレッチには以下のようなメリットが示唆されています。

可動域(ROM)の改善

静的ストレッチを継続的に行うことで、関節の可動域が広がる可能性があります(Afonso et al., 2021)。
特に柔軟性が不足している部位では、パフォーマンスや動作効率の改善につながる場合があります。

動かしやすさの向上

柔軟性の変化だけでなく、「体が軽くなった」「動きやすい」と感じる主観的な改善も報告されています。

リラックス効果

ストレッチには副交感神経を優位にし、運動モードから休息モードへ切り替える心理的効果も期待できます。

つまりストレッチは、
回復そのものを加速させるツールではなく、動きやすさやリラクゼーションをサポートするツールと考えるのが科学的に適切です。

リカバリーには「優先順位」がある

ここで重要になるのが「リカバリーピラミッド」という考え方です。

【土台:最も重要】

  • 睡眠
  • 栄養
  • 水分補給

【中段】

  • 軽い運動(アクティブリカバリー)

【上段:補助】

  • ストレッチ
  • マッサージなどのケア

ストレッチはピラミッドの上段、つまり補助的な役割です。
どれだけストレッチをしても、睡眠不足や栄養不足では回復は進みません。

まずは土台を整えること。それが最優先です。

正しい理解でストレッチを活用しよう

「ストレッチは意味がない」という言葉だけが一人歩きすると、本来の価値まで否定されてしまいます。

大切なのは、ストレッチの役割を正しく理解することです。

✔ ストレッチとの上手な付き合い方

  • 回復の主役ではない
  • 可動域改善やリラックスには有効
  • 目的を明確にして使う
  • まずは睡眠・栄養・水分を整える

ストレッチは万能ではありませんが、正しく使えば非常に有用なツールです。

「なんとなくやる」のではなく、
なぜ行うのかを理解することが、健康やパフォーマンス向上への第一歩になるでしょう。

参考文献

  • Afonso, J., et al. (2021). Strength Training versus Stretching for Improving Range of Motion: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine, 51, 1003–1016.
  • Bandy, W.D., & Irion, J.M. (1997). The Effect of Time on Static Stretch on the Flexibility of the Hamstring Muscles. Physical Therapy, 77(10), 1090–1096.
  • Roberts, J.M., & Wilson, K. (1999). Effect of Stretching Duration on Active and Passive Range of Motion. British Journal of Sports Medicine, 33(4), 259–263.
  • Marques, A.P., et al. (2009). Effect of Frequency of Static Stretching on Flexibility. Brazilian Journal of Medical and Biological Research, 42(10), 949–953.
  • Ebihara, B., et al. (2024). Static Stretching and Rectus Femoris Flexibility. Journal of Ultrasonography, 24, 25.

コメント

タイトルとURLをコピーしました